では、スカラーからベクトルへと移行したり、c-数からq-数へと移行するということはどういうことでしょうか。それをヌーソロジーの次元観察子の発展として考えてみましょう。
端的に言えば、ψ1~ψ2とψ3~ψ4の大きな違いは、観測者が潜在化しているのがψ1~ψ2であり、顕在化しているのがψ3~ψ4ということです。
つまり、次元観察子ψ3~ψ4が立ち上がる前においては、
潜在化されたψ 1は、実数としての物理量である「位置」 (c-数)、
潜在化されたψ*1は、実数としての物理量である「運動量」(c-数)
とみなされ、ψ3~ψ4が立ち上がった後においては、
顕在化されたψ 1は、演算子としての物理量である「位置」 (q-数)、
顕在化されたψ*1は、演算子としての物理量である「運動量」(q-数)
とみなされるのではないかということです。
さて、ψ1~ψ2とψ3~ψ4の空間的差異を、私たち人間である意識は気づきません。まず、ψ1とψ2が相対論的な対称性を持っていることすら気づいていないことが多いのですが、一番大きな差異は「量子」的概念を持っていないことだと思います。それは、人間の意識がいまだモノの中に投げ込まれていて出て来られないことを意味しています。
私たちは、人間の観察・認識・意識・精神は、事物・事象・物事が閉じられているということが何かア・プリオリに絶対的なものであると思い込んでいます。しかし、「物事が閉じられる」というのは、仕組み、つまり、構造があるということです。私たちは、物事は基本的に交換可能であることが前提となっている世界観に住んでいます。でも、実際はどうでしょうか。本当に交換可能であるものは少なく、むしろ非可換なものの方が普通です。つまり、「交換可能でない」世界観の方が当たり前だということです。
この交換可能性は、物理学の世界では、観測の単位の形成と大いに関わっています。量子論の話で登場した「量子条件」(量子化条件)というものです。「量子化」、つまり、観測される単位の形成には、観測者と対象が対で運営されている構造があって、それが潜在的な観測単位である「エネルギー量子」であるというわけです。「量子条件」は、前期量子論の段階では、波動としての電子が円周方向に閉じる単位を持つという
に始まり、
へと発展しました。場の量子論段階になると、これに代わる量子条件として、
を元にした消滅・生成演算子による交換関係が登場します。
さて、この「交換関係」とは何でしょうか。2項A,Bの2通りの積ABとBAの和と差からなる演算として、
というものを考えてみます。ふつうの数、つまり、c-数(古典論的数)である場合は、積の交換法則が成り立ちますから、
となります。ところが、q-数(量子論的数)の場合は、行列や微分演算子を用いるために、私たちが日頃当たり前に用いている「積の交換法則」AB=BAが成り立ちません。
を用いれば、
より、
右辺の第2項を左辺に移項して、演算子部分を整理すれば、
ここで、前述の交換子:[A, B]=AB-BAを使えば、
つまり、演算子の関係は、
このように、「交換子」を用いて表された2項関係を「交換関係」と呼びます。
同様に、「反交換子」を用いて表された2項関係を「反交換関係」と呼びます。
ここで、(63-11)の関係を用いて、
の交換子を計算すれば、
が成り立ちます。こうして「位置と運動量の交換関係」が導かれました。
これはいわばミクロとマクロの関係とも言える。これがヌーソロジーで言うところのψ1~ψ2に相当するものだと考えるわけです。
さて、1次元の理想的なバネの単振動のような調和振動子の運動方程式は、
古典力学においては、前述したように、
と書けました。さらに、運動量をp=mvとおけば、この「ハミルトニアン」と呼ばれる一般化された総エネルギーは、
と書けたのでした。したがって、量子力学などにおける1次元のバネの単振動のような位置演算子と運動量演算子による調和振動子の場合、ハミルトニアンは、
と表せます。ここで、
と、位置演算子と運動量演算子をいったん変換しておけば、(63-15)は、
と書けます。
とおけば、
となります。したがって、
となります。ここで、
となります。さらに、
を定義しておけば、
となります。個数演算子:
を定義すれば、ハミルトニアン(総エネルギー)は、
と書けます。ここで、アインシュタインの関係より、エネルギー量子1個は、
ですから、(63-25)があるまとまりとして「閉じる」(量子化する)条件となり、「モノ化」を引き起こす側の根拠となると思われます。 これを「量子条件」(または「量子化条件」)と呼びます。
さて、(63-25)の「量子化条件」は「エネルギー単位」を決めるものですから「エネルギー単体」、(63-27)の「ハミルトニアン」は一般化された「総エネルギー」をなすものですから「エネルギー総体」と呼ぶことにして、(63-28)のエネルギー量子を用いてまとめれば、
となります。個数演算子の固有値nは、n = 0, 1, 2, ……です。
となりますが、これは、日本語で書けば、
(エネルギー総体)+(エネルギー単体)}=(個数演算子)・(エネルギー量子)
と書けます。この個数演算子は、実際のエネルギー量子の個数になります。これは、自然に、
を満たしますが、
を満たす関係を規格化された「正準な交換関係」または「ボゾン型交換関係」と呼び、この関係を満たす調和振動子を「ボソン型調和振動子」と呼びます。
また、
となり、それぞれ粒子1個の生成・消滅を表すことから、
と呼びます。 さらにハイゼンベルグ方程式より、
となりますから、結局、
となり、解として、
が求まります。
ところで、(63-32)において、エネルギー単体を決める「量子条件」と、エネルギー総体である「ハミルトニアン」を見かけ上交換して、
となるような、生成・消滅演算子
を考えて、同様の調和振動子を構成できないか考えてみます。まず、
という条件を与えておくと、
とおけば、
となります。したがって、
となります。ここで、
となりますから、(63-39)は、
となります。これは、位置と運動量の相平面において、「双曲線」を描くようなイメージでだとも言えます。また、(63-45),(63-46)は、
となります。これは、
という規格化された「正準な反交換関係」または「フェルミオン型交換関係」と呼ばれる条件を満たす系をつくります。この関係を満たす調和振動子を「フェルミオン型調和振動子」と呼びます。ただし、この場合、生成・消滅演算子は、微分演算子にはなり得ず、必ず行列演算子になります。
図63_1 相平面の見え姿と円錐曲線(長谷川浩司『線型代数』より参照して転用)
ちなみに、この場合は、アインシュタインの関係を用いて、
としておくと、フェルミオン型調和振動子の個数演算子:
を定義しておけば、
となり、それぞれ粒子1個の生成・消滅を表します。また、
となります。フェルミオン型の調和振動子について、改めてまとめておくと、
となります。個数演算子の固有値nは、n = 0, 1です。
さて、この辺りでヌーソロジー的な観点からまとめておきましょう。まず、次元観察子ψ1~ψ2が「表相の方向における対化」なら、ψ3~ψ4は「位置の交換の対化」と呼ばれます。
ψ1~ψ2に対する私の個人的な見解としては、古典力学における最も基本的な物理量である作用は、
と書けますが、この「(運動量)・(位置)-(エネルギー)・(時間)」という形こそ、ヌーソロジの次元観察子ψ1~ψ2およびψ*1~ψ*2の関係を表しているのではないかと考えます。
ここで、時間、位置(空間)を変数と考えて、作用を時間、位置(空間)で微分すれば、
となりますし、逆に、エネルギー、運動量を変数と考えて、作用をエネルギー、運動量で微分すれば、
…(63-64)
となります。私たちが3次元空間だとか言ってx軸、y軸、z軸などとふつう考える座標系は、この時間、空間を変数と考える、前者の見方で、「位置座標空間」であり、これはある意味「観測者」が静止している「静止位置座標空間」と呼んでもいいものです。この「静止位置座標空間」では「運動位置」は静止位置ベクトルの微分で表されます。逆に、エネルギー、運動量を変数と考える、後者の考え方は、「運動量座標空間」であり、これはある意味「観測者」が運動している「運動位置座標空間」と呼んでもいいものです。この「運動位置座標空間」では「静止位置」は運動位置ベクトルの微分で表されます。少し、ヌーソロジー的に観測者と対象の関係を考えますと、
位置 : r =顕在的静止位置座標=顕在的静的視点の観測者が見る対象の位置
運動量 : p =顕在的運動位置座標=顕在的動的視点の観測者が見る対象の位置
時間 : t =潜在的静止位置座標=潜在的静的視点の観測者が見る対象の位置
エネルギー : E =潜在的運動位置座標=潜在的動的視点の観測者が見る対象の位置
という感じになるでしょうか。これらを対峙的な表現でまとめて書けば、
ψ 1:静止位置 (位置)⇔ψ*1:静止位置微分(運動量)
ψ*2:運動位置微分(位置)⇔ψ 2:運動位置 (運動量)
という関係になるわけです。さらに、ψ3~ψ4は それらを第一量子化(粒の量子化)してふつうの数であるc-数(古典論的数)から、微分演算子や行列演算子などのq-数(量子論的数)へと引き上げてから、
ψ 3:交換関係 によるエネルギー単体(量子条件)
ψ*3:反交換関係によるエネルギー総体(ハミルトニアン)
ψ 4:反交換関係によるエネルギー単体(量子条件)
ψ*4:交換関係 によるエネルギー総体(ハミルトニアン)
として第二量子化(場の量子化)を適用したものではないかと考えています。
ここでは、物体の運動というものを、バネの単振動のような調和振動子として考えています。このとき、位置と運動量の「交換関係」という「量子条件」を「エネルギー単体」を決める基準とする「ボソン型調和振動子」と、位置と運動量の「反交換関係」という「量子条件」を「エネルギー単体」を決める基準とする「フェルミオン型調和振動子」を考えることができます。
前述したように、
となります。このフェルミオン型調和振動子のエネルギーは、結局±1/2εの2値しか取れないことがわかります。この2値化がひょっとしたら、ψ1とψ2の関係を±1の異符号的2値関係として見てしまうそもそもの根拠を与えているのではないでしょうか。
フェルミオンの個数演算子の固有値の0と1と、ボソンの個数演算子の固有値の0, 1, 2, …では、ある種の次元が異なっているようにも思えます。つまり、フェルミオンの個数演算子の固有値の0と1という、粒子が「全くない」か「全くある」かという特性は、言い換えれば、フェルミオンが「はじめ」(誕生)と「おわり」(死)の両端にだけ関与しているとは言えないでしょうか。一方、ボゾンの固有値は0から始まって1, 2, …といくらでも増えていくことから、ボゾンはある意味フェルミオンとは違って、「まんなか」(過程)の領域に自由に明け渡されているとは言えないでしょうか。
ところで、「ヌーソロジー」の中で「位置」と呼ぶときは、通常、私たちが使っている意味の、物理的な意味での「空間」的な「位置」ではありません。「観察者」は、3次元空間なら3次元空間を離れて「無限遠点」にいると想定し、それを「位置」と呼びます。
これを私は、「ψ1:空間、ψ*1:空間微分」の「双対性」つまり「切っても切れない関係」を見い出したとき、初めて「位置」と「運動量」という「正準共役な関係」がわかっている理解の次元に達したと見て、「位置」と呼べるようになるのではないかと考えます。
そうすると、文字通り「位置の交換」とは、「位置と運動量(位置微分)の交換関係」を見い出した次元の認識の様態のことではないでしょうか。つまり、「位置と運動量の不確定性原理」の中で翻弄される次元ではなく、「位置と運動量の不確定関係」を理解した上でこれらを「正準共役な物理量」として扱える次元になったということです。
そもそも何を言いたいかを整理しておきましょう。
まずは、「ボゾン」(力の媒介粒子)型調和振動子というのは、自己側の「モノの見方」ではないかと思います。つまり、決めた「ひとまとまり」の尺度を単位として、自己の視線は、世界が無限に前進(増進)していくものと信じています。
ところがです。自己の前に立ち現われる他者の視線は、自己にとっては、世界を分断し、「この私」である自己もろとも世界を、「エネルギー単体」という微小領域の中に投げ込んできます。この「エネルギー単体」の両極が自己と他者という此岸と彼岸です。これが「フェルミオン」(物質の素粒子)型調和振動子的な「モノの見方」であり、他者側からの見方です。
しかし、こうした自己側、他者側の「モノの見方」は、あくまで自己の立場に立った世界観でしかありません。それがψ3~ψ4が「人間の外面・内面」とも呼ばれる所以であるように思います。この歪んだ関係が、私たちの認識視界である「電磁場」を形成することになります。つまり、曲げられた認識空間が「電磁場」というわけです。そうすると、短絡的なイメージとしては、「電磁場」の単位量子としての「光子」は、「あなた」と「わたし」の視線の間を直径とする1つの球体のように思えてきます。
図63_2 フェルミオンとボゾンの相互関係のイメージ
もう少し外部的な構造から述べれば、ψ13~ψ14の観察的視点はψ11~ψ12を動かして、ψ9とψ10を前後軸として突っ張ったまま、下半分の中央に位置するψ7~ψ8という元止揚空間への貫入をもたらし、結果的にはそこでの世界形成に関与し、最終的に人間の意識のベースとなるψ1~ψ2の時空の地平を整備しているように思えるのです。
図63_3 見ることで見る者と見られる物が生まれるように
ψ9とψ10による前後からの貫入がψ7~ψ8の時空生成にエネルギーを与える
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