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2020年1月8日水曜日

61. 無数のバネの連成振動

 さて、量子力学などで扱う物理系というのは、古典力学で扱う物理系の例の中で比較的近い例に喩えて考えるならば、以下のような感じになるのではないかと思います。
つまり、同じ材質で同じ太さを持った全く同じバネ定数(ここではバネ自体は重さを持たないとします)と同じ質量の錘からなるバネをn個連結させて、前後に一定の振動を繰り返している運動を考えてみます。各々の錘は振動を繰り返すわけですが、それぞれにちょうど真ん中と呼べるような「平衡点」があると考えれば、各々の錘はこの平衡点からの距離を「変位」(位置の変化)とすることになります。
61_1 n個のバネを連結した振動運動

具体的に書けば、長さd、バネ定数kで質量を持たないバネによってn個の質量mの始点が連結されている系を考える。すると、i番目の質点の平衡点(静止したときの位置)からの変位qi(t)は、ニュートンの運動方程式により、

  (61-1)
と書けます。ここで、壁に繋がれた両端、つまり、固定端の変位
 (61-2)
とします。また、系全体の質量をM、長さをLとし、各バネの張力をτとすれば、
 ……(61_3)
となりますが、これらが一定になるように振動していると考えます。このとき、
 ……(61_4)
となる極限を考え、変位qi(t)i番目のバネの長さdという位置虚数単位iまで変数として含めて、
 ……(61_5)
と書くことにします。
……(61-6)
両辺を係数で割って、n→∞の極限を取れば、
……(61-7)
となりますが、
 ……(61-8)
と書けますから、d0のとき、 
  ……(61-9)
となります。ここで、
を定義して変形すれば、結局、
……(61-11)
となります。微分演算子を用いれば、
 ……(61-12)
と書けます。これは古典力学における1次元空間(より正しくは2次元時空)の「波動方程式」と呼ばれます。

これを3次元空間(より正しくは4次元時空)における位置r=(x, y, z)とした上で、位相速度vを光速度cにし、変位の関数q(x, t)ψ(r, t)とすれば、ナブラ演算子: 
 ……(61-13)
を用いて、
 (61_14)
と書けます。場の量子論などにおける「場」というのは、静止状態ではなく、こうした無限個のバネが連なる調和振動子のように、常に振動している状態を想定しているのです。
 最後の方程式は、素粒子的には、スピン0の粒子(スカラー粒子)の相対論的運動方程式をなす「クライン=ゴルドン方程式」のうち、質量を持たない場合を示しています。

 改めて古典論における波動方程式とクライン・ゴルドン方程式をまとめておきます。

 










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