ページビューの合計

2020年1月7日火曜日

54. 現代力学的自然観の発展

さて、前期量子論の段階が力学の新しい観点の導入部だとすれば、それが実際の量子現象に対する計算として機能するように体系づけられたものが量子力学でした。しかし、まだこの段階では、数個と数えられる程度のあくまでも粒子性をベースとした「粒の量子論」でしかありませんでした。これを常に粒子が生成・消滅を繰り返している場でも適用できるように、パウリらの活躍によって発展させたものが「場の量子論」の考え方でした。

量子力学……「粒子に波動性を組み込み量子化する」
 =「粒の量子化」(第一量子化)のための理論。
 「粒子の個数が確定した力学系」が対象。電子などの量子化。

場の量子論…「場(波動)に粒子性を組み込み量子化する」
 =「場の量子化」(第二量子化)のための理論。
 「つねに粒子が生成・消滅を繰り返しているような力学系」が対象。
  電磁場などの量子化。

54-1 粒の量子化と場の量子化(京極一樹『図解 だれにでもわかる素粒子物理』より)

一般に、自然現象を物理学的に解き明かしていくと、最終的には、基本的な物質粒子と、「自然界の4つの力」と呼ばれる4つの力(あるいは、相互作用とも呼ばれる)に分解することができると言われています。「自然界の4つの力」とは、以下の4つの「力」(あるいは「相互作用」とも呼ばれる)のことです。
54-2 自然界の4つの力自然界の4つの力
http://spaceinfo.jaxa.jp/ja/kagaku_kag04.html (2010.2.27時点)より)

これら4つの力は、一般に、2の粒子間で「力を媒介する粒子」を交換する図式として以下のようなイメージで表現されます。

54-3 自然界の4つの力のイメージ

素粒子物理学においては、基本的な物質粒子も「自然界の4つの力」自体も、「粒子性」と「波動性」の両方を併せ持つ「量子」と呼ばれる存在として扱われます。私たちがふつうに暮らしている時空では、粒子性と波動性の両方を併せ持つ――つまり、粒であり波でもある存在と言われてもピンと来ないと思います。粒は粒だし、波は波で完全に別個のものだからです。ところが、原子の内部のようなミクロの世界では、電子は粒子のような存在でありながら、波動的な側面を持ちますし、光は波動として伝わりますが、同時に、光子という粒的な存在として扱うことができます。
この量子の考え方に則れば、物質粒子は「フェルミオン」と呼ばれる量子であり、4つの力はそれぞれの力を媒介する「ボソン」と呼ばれる量子として説明されます。一般に、この「フェルミオン」(物質粒子)と「ボソン」(力の媒介粒子)をまとめて「素粒子」と呼びます。

 フェルミオン(物質粒子) どちらかと言えば、粒子としての特徴が強いが、
 波動性も持つ。物質を構成するもの。
 uクォークやdクォークなどの「クォーク」や
 電子や電子ニュートリノなどの「レプトン」。

 ボソン (力の媒介粒子) どちらかと言えば、波動としての特徴が強いが、
 粒子性も持つ。力を伝えるもの。
 光子」「ウィーク・ボソン」「グルーオン」など。

「物質粒子」と聞くと、まず、原子を構成する原子核と電子、その原子核を構成する陽子や中性子という核子が思いつきますが、さらにその陽子と中性子は3個のクォークでできており、そうしたクォークや、電子やニュートリノなどのレプトンがより基本的な物質粒子です。この最も基本的な物質粒子であるクォークやレプトンをフェルミオンと呼びます。一方、力の媒介粒子は、光子や、ウィークボソンと呼ばれる弱い力の場の粒子、グル―オンと呼ばれる強い力の場の粒子などがあります。ここで、「物質粒子」、「力の媒介粒子」などと言われるときの「粒子」は既に「量子」のことですので、間違えないで下さい。つまり、「素“粒子”」と呼ばれるものは、名前に“粒子”とついていても粒子ではないのです。素粒子は、「フェルミオン」(物質粒子)にしろ「ボソン」(力の媒介粒子)にしろ、粒子性と波動性の両方の特徴を持つ「量子」と呼ばれる存在なのです。

さて、「自然界の4つの力」ですが、これは宇宙が誕生する瞬間はそもそも同じ一つの力だったと考える考え方が「力の統一理論」です。そこからまず重力が分かれ、続いて強い力、最後に、弱い力と電磁気力が分かれたとされています。この4つの力の分化の際に、ある種の「対称性」というものが破れて、枝分かれしていったと考えます。

 「場の量子論」が整備されると、その考え方に基づき、電磁気力を説明する量子電磁力学(QED)や強い力を説明する量子色力学(QCD)が生まれましたが、やがて、それらを含む「自然界の4つの力」を統一する理論が考えられるようになり、現在その一番の有力候補と言われているのが「超ひも理論」とも言われる「超弦理論」です。

量子電磁力学(QED)…電磁場の量子化の理論。光子の交換による電磁力を扱う。
           U(1)ゲージ理論。

ワインバーグ=サラム電弱統一理論
 …電磁力と弱い力の統一場の理論。
  SU(2)×U(1)ゲージ理論+ヒッグス機構。

量子色力学(QCD)……強い力の場の量子化の理論。
           グルーオンの交換による強い相互作用を扱う。SU(3)ゲージ理論。

標準模型………………電磁力・弱い力・強い力の大統一場の理論。
           SU(3)×SU(2)×U(1)ゲージ理論。

超ひも理論……………電磁力・弱い力・強い力・重力すべての統一場の理論候補。

54-4 M理論と5種類の超ひも理論および超重力理論の関係

54-5 力の統一理論(京極一樹『図解 だれにでもわかる素粒子物理』より)



0 件のコメント:

コメントを投稿