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2020年4月29日水曜日

81. U (1) ゲージ変換

では、U(1)ゲージ変換とは、具体的に一体どのような座標変換でしょうか? U(1)ゲージ変換というのは、簡単に言えば、素粒子の場の関数の位相を別の位相に変えるような変換の一種、つまり、位相の回転のようなものと考えればいいでしょうか。場の関数ψというのは、無数の波動関数のようなものから出来ていると考えると、こんな感じです。


ただし、ゲージ変換が厄介なのは、この場の関数の位相変換に付随して、微分演算子も同調させて変換しておかないと、後で計算上都合が悪くなります。そこで、一緒に、次のような、微分演算子Dμに対する位相変換もしておくわけです。

この微分演算子Dμはそもそも、素粒子の場の関数ψに作用するものですから、場の関数への作用に関して、以下のように変化することになります。

前述の場の関数の位相変換と合わせると、こんな感じです。


これがU(1)ゲージ変換の変換性です。ただし、厄介なことに、これをローカルな時間と空間r=r (x, y, z)の関数としてのローカル・ゲージ(局所位相)θ(t, r)に対して成り立たせようとすると、位相変換による歪み分を調整する補正項を、微分演算子Dμ自身の内部に抱え込まなければいけなくなります。この「位相変換による歪み分を調整する補正項」こそ、ゲージ場であり、前述のボソンの起源になります。U(1)ゲージ変換における微分演算子Dμの詳細は添数付きでこんな感じになります。正確には「共変微分」と呼ばれます。

言い換えれば、U(1)ゲージ変換という座標変換を行なったことによる歪み分を補正するものこそ、ボソン(力を媒介する粒子)としての光子であり、それこそが電磁気力という相互作用において、交換されるものの正体だと言うわけです。


ゲージ変換という座標変換によって、ある種のモノの見方、捉え方の角度を変更するとき、運動の形を変えないために、内部空間の歪みとしてのボソンが現れて、調整を行う。これこそが、観測に伴う歪みだとも言える。

 ヌーソロジー的に、人間の意識との関連において、この意味をどう捉えるかが、より深く探究したいところです。

実際に
計算してみると、

となります。




80. 素粒子と対称性

改めて、「相対論」と「量子論」に関して、ヌーソロジーと関係の深い「物の見方・捉え方」という観点から、その考え方の特徴をピックアップしてまとめておきましょう。


○<相対論的な考え方>
従来の考え方=対象 (点)  の移動(座標系は不動)
⇒対象だけに焦点が当たり、観測者の存在が忘却される。
新しい考え方=観測者(座標系)の移動(対象は不動)
⇒観測者に焦点が当たり、 対象との関係が浮き彫りになる。
ただし、まだ観測の観点が変わっただけで、観測が対象の状態に影響を及ぼすところまではいかない。

○<量子論的な考え方>
古典論……物理量がc-(ふつうの数)で、対象中心の考え方。
量子論……物理量がq-(演算子など)で、観測者-対象セットの考え方。
 観測=演算子の状態ベクトルへの作用。観測結果=演算子の固有値。
⇒観測が対象の状態に影響を及ぼす。

こうした観点の延長線上に、現代物理学においては、「対称性」と呼ばれる「ある座標変換に関して不変である性質」に基づいて、物理法則が考えられるようになりました。これを「対称性原理」と呼びますが、素粒子物理学における「ゲージ原理」と呼ばれるものも、この対称性原理の一種です。

まずは、お題目的に、主なゲージ対称性を掲げておきましょう。


U (1)ゲージ対称性……荷電粒子が持つ対称性(ゲージ場が電磁場)。

SU (2) ゲージ対称性…レプトン対(電子とニュートリノ)や、
クォーク対(uクォークとdクォーク)が持つ対称性
(ゲージ場がウィークボソン)。

SU (3) ゲージ対称性…クォーク3個の結合組のカラーに関する対称性
(ゲージ場がグルーオン)。

SU (4) ゲージ対称性u, d, c, sのクォークが持つ対称性(中間子構造)。

SU (5) ゲージ対称性u, d, sのクォークとe, νのレプトン対のセット
が持つ対称性。


ヌーソロジーでは、これらのゲージ対称性が、人間の意識構造と非常に深い関係があると言っているわけです。まさに、ここからがヌーソロジーの一番の醍醐味を味わう現場です。ヌーソロジーの次元観察子と素粒子との対応はおおよそ以下のようになっています。


自然科学(特に、物理学) 
      現代素粒子物理学対応 

ψ7ψ8 強い力(クォークとグルーオン)   
ψ5ψ6 弱い力(レプトンとウィークボゾン) 
ψ3ψ4 電磁気力(荷電粒子と光子)     
ψ1ψ2  時空            


より正確に書けばこんな感じでしょうか。


ψ7ψ8 強い力の場 (クォークとグルーオン)   SU(3) ゲージ対称性と関係
ψ5ψ6 弱い力の場 (レプトンとウィークボゾン) SU(2) ゲージ対称性と関係
ψ3ψ4 電磁場     (荷電粒子と光子)      U(1)  ゲージ対称性と関係
ψ1ψ2  時空


さて、自然界のあらゆる現象は、電磁気力・弱い力・強い力・重力という「自然界の4つの力」によって説明ができるとされています。この4つの力が宇宙が誕生する瞬間はそもそも同じ一つの力だったと考える考え方が「力の統一理論」です。そこからまず重力が分かれ、続いて強い力、最後に、弱い力と電磁気力が分かれたとされています。この4つの力の分化の際に、ある種の「対称性」というものが破れて、枝分かれしていったと考えます。
この対称性として登場するのが、先に列挙したU(1)ゲージ対称性、SU(2) ゲージ対称性、SU(3)ゲージ対称性といった「ゲージ対称性」です。そこで、改めて、その「ゲージ対称性」とは何かということになるわけですが、このゲージ対称性には、実は2種類があって、「グローバル・ゲージ(大局的位相)変換対称性」と「ローカル・ゲージ(局所的位相)変換対称性」があります。ふつうゲージ対称性という場合は、後者のローカル・ゲージ変換対称性を指します。
ところで、対称性原理とは「ある座標変換の前後である物理法則が常に成り立つ」ということを要請するものであしたが、この「ある物理法則が成り立つ」ということは、その物理法則を成り立たせるためのある「運動方程式の形」が変化しないことを意味します。例えば、ガリレイ相対性原理という対称性原理は、ガリレイ変換の前後でニュートンの運動方程式の形が変わらないことを要請します。同じように、U(1)ゲージ原理という場合は「U(1)ローカル・ゲージ変換の前後で素粒子の運動方程式の形が変わらない」ことを要請します。この場合の運動方程式は、非相対論的な素粒子に対する「シュレディンガー方程式」や、相対論的な素粒子に対する「ディラック方程式」を指します。

80.1 大局的位相変換と局所的位相変換

ここで、ゲージ原理について、きちんとまとめておきましょう。


○ゲージ対称性(ゲージ不変性)
…ローカル・ゲージ変換(局所的位相変換)の前後で、素粒子の運動方程式の形が変わらないこと。

○ゲージ原理
…ローカル・ゲージ変換(局所的位相変換)の前後で、ローカル・ゲージ変換対称性が保たれることを要請する原理。対称性原理の一種。これによって、素粒子間に働く相互作用が規定される。

○ゲージ理論
…ゲージ原理に基づいた理論。


このことから、U(1)対称性というのは、このゲージ対称性の一種で、ローカル・ゲージ変換(局所的位相変換)としてのU(1)ゲージ変換の前後で、素粒子の運動方程式の形が変わらないことを意味するというのがわかります。



2020年4月28日火曜日

79. ヌーソロジーにおける U (1) 解釈

ここで、ヌーソロジーにおける半田広宣氏のゲージ理論に対する解釈を載せておきましょう。

半田広宣氏の『2013:人類が神を見る日 アドバンスト・エディション』第1部のP.233P.237にこんな記述があります。

電子の波動関数の裏側に隠された高次元の幾何学構造がおぼろげに見え出してからというもの、わたしの脳裏に去来する素粒子たちのイメージは全く別のものへと変容し始めていた。ミクロからマクロにわたる全時空を包括し、なおかつ、それらを幾重にも重ね合わせていく真のマクロ的宇宙に張り巡らされた意識空間のスピンネットワーク、わたしはそれこそが素粒子たちの本性に見えてきたのだ。ではもっとも基本的な量子、光子(電磁場)についてその解釈を試みていくことにしよう。

素粒子全般の描像を困難にしている根本の原因は、今まで何度か触れてきたように、それらが通常の対象とは違って、数学的には高次元的な存在としてしか記述できないという点になる。この「高次元」という内容が読者には分かりにくいと思うので、もう少し具体的に説明しておこう。

一般に物理学では、素粒子としての場φが定義されている時空Rの各点tに複素平面Ctがくっついているものと考える。そして、この場φ(t)Ctの一要素と見なす。このときの空間Ctは決して表には現れてこない仮想空間として扱われる。つまり、時空の各点には、わたしたちには知覚できないが、それが存在しないと素粒子の説明上はなはだ困るような別次元の空間が不可視のかたちで広がっているというわけだ。この種の空間を物理学者たちは〈内部空間〉と呼ぶ。しかし、ここで余分に与えられている空間は単なるユークリッド的なx,y,z方向のような次元ではない。例えば、〈内部空間〉に1次元を設けるということは数学的には時空上の各点tに複素平面Ctにおける円運動の自由度が1つ余分に与えられるということを意味する。つまり内部空間とは実数空間ではなく、虚数と実数が入り交じった複素数が暗躍する世界なのである。この意味で素粒子の場は単なる時空以上の高次元空間を持つと考えられているわけである。では、この高次元要素である内部空間が一体何を意味するものか、前節まで述べられてきた内容と対応させながら考えてみよう。」

図79.1 オイラーの公式と表相
(半田広宣『2013:人類が神を見る日 アドバンスト・エディション』p.234より図9-11

まず、わたしたちが時空R上の任意の点1tを規定するとはどういうことだろう。それは簡単に言えば、ある特定の瞬間にある特定の位置を見るということである。これはオコツトが言うところの表相という概念に極めて似通っていることが分かるはずだ。
今、右図9-11(上の図8)のように、自己の外面における一つの表相をイメージしてみるとしよう。人間の外面における表相とは主体の質点と客体の質点を結ぶ線の中の空間のことだった。この下図では矢印3と矢印4が作る空間に相当する。この空間は対化として必ず人間の内面側にも表相を持っている。人間の内面における表相とは簡単に言えば、対象を挟んでその180度反対側に生まれている線の中の空間、つまり矢印12が形作る線的空間のことだ。矢印1の行き着く先は自己から見れば、当然、「対象の向こう側にある無限遠点」で連結している(前章の〈うしろの正面だァれ〉原理を思い出してほしい)。
つまり、主客一体という観点で、点という対象を空間上に設けるためには、その点対象の位置のみならず、その点を見るための観測者の位置、さらには、その点を真反対から見るような位置、さらにはその真反対から見た点の位置、という4つの要素が必要となるわけだ。人間の内面と外面という概念を考慮に入れれば、これらの4つの点によって連結されている空間(実際はこれこそがわたしたちがユークリッド的点と呼んでいるものの本質と考えるべきなのだが………)こそが物理学者たちが内部空間と呼ぶものではないかと考えられるのである。さきほど説明した複素平面Ctにおける円運動の自由度とは、表相においては、この空間における意識振動の自由度を意味する。つまり、観察行為を考慮した場合、単なるユークリッド的な点などといったものは、この空間には存在し得ないのだ。点とは何か――と問われれば、この表相という概念こそがその回答に最もふさわしい。」

79.2 大局的ゲージ変換
(半田広宣『2013:人類が神を見る日 アドバンスト・エディション』p.234より図9-12

「では、点に対するこの新しい解釈を念頭において、ゲージ原理の基本となる変換群U(1)による場φの変換という概念について考えてみよう。
この変換は、下図9-12(上の図6.4)に示したように、それに付随する内部空間Ctにおいて、φ(t)をどの時空点においても一斉に同じ角度だけ回転させることに対応する。この操作は時空のあらゆる点で、それぞれに付随する内部空間Ctにおける回転の尺度を同じに取ることを意味するが、物理学ではこのような変換を大局的ゲージ変換と呼ぶ。この内容は今までの文脈から考えれば、変換群U(1)がすべての時空点、つまり、すべての表相において同等に作用するということである。では、すべての表相とはどういう内容を指すのだろうか。それは前章で述べたように、「あらゆる瞬間に、あらゆるところから、あらゆるところを見る」ということに他ならない。
これらのことから変換群U(1)が示唆する空間の正体が読者にも何となく見えてくるのではないだろうか。つまり、変換群U(1)が働いている複素平面Ctにおける円環の世界とは、90度ごとに連続した反転運動を行っている5次元空間の4つのパターンと同じものではないかということである。そして、実は、このような変換場が物理学においては電磁場とされるのだ。では、その本質とは一体何か。今まで述べてきた内容を考慮すれば結論は明らかだ。それは、すなわち、人間の内面と外面の意識を形成している場のことである。

電磁場(光)とは人間の意識が生み出されているところです
――シリウスファイル:19910805
電磁場(光)とは人間の意識が生み出されているところです
――シリウスファイル:19910805

(半田広宣『2013:人類が神を見る日 アドバンスト・エディション』p.233p.237

少しだけ補足しておけば、この説明の中で、「大局的ゲージ変換」とは、素粒子物理学などで「大局的位相変換」あるいは「グローバル・ゲージ変換」と呼ばれる変換のことですが、この文章の流れでは、「大局的ゲージ変換」として登場するU(1)群が、そのまま電子間の「電磁相互作用」を説明する「U(1)ゲージ変換」のU(1)群であるような印象を与えています。これは少し誤解を伴う表現です。正確には、「電磁相互作用」を説明する「U(1)ゲージ変換」のU(1)群は、「局所的位相変換」あるいは「ローカル・ゲージ変換」つまり略して「ゲージ変換」と呼ばれるものとして登場すべきものです。
簡単に言えば、「グローバル・ゲージ変換」のU(1)群 
の位相θは時間および空間に依存しない「定数」ですが、「ローカル・ゲージ変換」のU(1)
の位相θは時間および空間に依存する「関数」です。「U(1)ゲージ変換」は「ローカル・ゲージ変換」であり、それゆえに「内部空間」に歪みが生じ、その歪みを調整するのが「ゲージ場」としての電磁場(4元電磁ポテンシャル)です。
ヌーソロジー的に解釈するなら、この「U(1)ゲージ変換対称性」を要請することによって生じる歪みを「電磁場」(光子)として調整する機能が、ψ9~ψ10(正確には、他者側のψ*9~ψ*10かな?)の「調整質」の機能ではないかと思います。その結果、凝縮化して、ψ3~ψ4としては光子がもたらされるのだと考えます。
もう一度振り返っておくと、電磁場の中を通る荷電粒子の運動量は、

日本語で書けば、(粒子の運動量)-(電荷)・(電磁ポテンシャル)

であり、第1項は並進運動量(線型運動量)ですが、第2項はその並進運動(平行移動)を妨げるようなものだと言ってもいいかもしれません。つまり、ある意味、スムーズな並進運動を邪魔するような存在、いわば、内部空間の曲率こそが、電磁場というゲージ場の強さを表しているわけです。
ヌーソロジー的解釈から言ってしまえば、そういった「世界」を歪曲する存在こそが「自己」という世界-内-存在なのではないでしょうか。




78. 左巻き粒子と右巻き粒子

 ……(78-1)
とすれば、スピン1/2の粒子の運動を表すディラック方程式は、 
 ……(78-2)
と書けます。ここで、ディラックのγ行列は、
 ……(78-3)
を満たす4×4行列であればいいのでした。その中で、

速度が遅い「非相対論的粒子」は「ディラック表示」(または「ディラック・パウリ表示」)

速度が光速に近い「相対論的粒子」については「ワイル表示

を用いるのが有効です。実際、

とします。
ただし、エネルギー用:
カイラリティ判定用:
とし、パウリ行列を、
とする。


なお、低速粒子と高速粒子は、


によって、
と互いに変換し合えます。高速粒子におけるは「カイラル演算子」とも呼ばれます。

2×2小行列を用いた演算子を
とすれば、
ディラック方程式は、2×2の小行列と2成分列ベクトルを用いて、

(青の対角線1次元時間と質量 赤の対角線…3次元空間)


 
(青の対角線…質量 赤の対角線…1次元時間と3次元空間)
と書けます。

したがって、2×2の小行列と2成分列ベクトルの関係として、展開すれば、
となります、

まだ、私の一つのアイデア段階でしかありませんが、これらの式のヌーソロジー的解釈を以下のように見てはどうでしょうか。
低速粒子…自己とモノとの関係 ⇔ ψ3~ψ4:自己の外面・内面   
ボゾン
高速粒子…自己と他者の関係  ⇔ ψ5~ψ6:自己-他者関係(単数)
フェルミオン

78.1 高速粒子と低速粒子のヌーソロジー的解釈
  


ここで、エネルギー・質量・運動量の関係を比にして眺めてみます。

これは、ちょっと面白いことに、以下のような射影的な関係を示しています。

78.2 (1cosθ)、(1cosθ)とsinθの射影的関係