ページビューの合計

2020年1月6日月曜日

53. 現代力学的自然観の形成

こうしたプランクの作業量子仮説やアインシュタインの光量子仮説は、ボーアによって後に「前期量子論」と呼ばれる、以下のような作業仮説としてまとめられました。

1)原子内の電子は古典的に可能な運動状態から特別に選ばれた軌道にあるときだけ、一応安定し、光を放出しない。これを「定常状態」と呼び、その軌道を「量子化された軌道」と呼ぶ。定常状態は量子化された(つまり、不連続でとびとびに分布する)エネルギーを持つ。その一つ一つを「エネルギー準位」と呼ぶ。

2)電子は定常状態にあっても、「量子飛躍」によって他の定常状態に飛び移るが(これを「遷移」と呼ぶ)、その際、遷移前後のエネルギー準位間隔に等しいエネルギーを持つ光子を放出または吸収する。その光子の振動数は準位間隔をプランク定数で割ったものに等しい。
3)定常状態は角運動量(回転運動量)が
……(53-1)
の整数倍になるという「量子条件」(または量子化条件)によって決定される(これは後に「作用量」(=運動量・位置=エネルギー・時間=角運動量)に改められる)。この整数値は量子化された軌道、または、エネルギー準位の番号となるもので、「量子数」と呼ばれる。
(並木美喜雄『量子力学入門』p.34p.35より)

このボーアの作業仮説として唱えられた、ある意味離散的な定常状態としての「エネルギー準位」の存在は、1914年のフランクとヘルツの実験によってその存在が確かめられました。
すると、今まで波動と考えられていた光が粒子的な性質を持つのであれば、逆に、今まで粒子と考えられていた電子が波動の性質を持たないだろうかと、ド=ブロイが考えたのもまた自然な発想でした。こうして、ド=ブロイの物質波仮説が考え出されました。
こうして、アインシュタインの光量子仮説とド=ブロイの物質波仮説から、量子に関する最も重要な関係式が見出されました。つまり、

・アインシュタインの光量子仮説から、「アインシュタインの関係」:
   (53-2)

・ド・ブロイ   の物質波仮説から、「ド・ブロイの関係」   :
   (53-3)

が了解され、これらから、

アインシュタインの光量子仮説…「波動」である「」 が「粒子性」を持つ。
ド・ブロイ   の原子波仮説…「粒子」である「電子」が「波動性」を持つ。

という仮説が立てられました。このような「粒子性」と「波動性」の両方を併せ持つ存在を「量子」と呼びました。
同じ量子論でも「粒子性」と「波動性」のどちらに基礎を置くかで、その考え方を体系づける骨格だとかアプローチなども変わってきます。この前期量子論の考え方は、全体として、どちらかと言えば、「粒子性」に基礎を置いた考え方でしたが。中でも、「波動性」側からアプローチを試みたのがシュレディンガーらであり、「粒子性」側からアプローチを試みたのがハイゼンベルグらでした。こうして、

・「波動性」側からの発展として、解析学を用いたシュレディンガーの「波動力学
・「粒子性」側からの発展として、代数学を用いたハイゼンベルグ の「行列力学

が誕生しました。後にこれらはその同等性が確認され、「量子力学」となりました。さらにファインマンは第3の量子化の方法として、より幾何学的描像がしやすい「経路積分法」(経歴総和法)というものを考案しました。その他、量子化の手法として、ネルソンの確率過程量子化などがあります。

さて、量子現象と呼ばれるものには以下のようなものがあります。

1)定常状態
特定の不連続とびとび型のエネルギーだけが安定な波動(運動状態)として許される。

2)ゼロ点振動
最低エネルギー状態でも、有限の運動量を持つ振動が存在する。最低状態の振動をゼロ点振動と呼ぶが、ゼロでないゼロ点振動の存在は量子論的効果による。この最低エネルギー状態を真空と呼び、そのゼロ点振動を真空の揺らぎと呼ぶ。

3)位置と運動量の不確定性関係(ハイゼンベルグの不確定性原理
最低エネルギー状態では位置のとる値および運動量のとる値を同時に確定することができない。

4)トンネル効果
量子力学的粒子が壁と衝突する場合に、壁が壊れなくても壁を透過することができる。

また、量子的存在の不思議さとして、以下のことが考えられる。

非局所的長距離相関または分離不能性
Aaの値をとればBbの値をとり、Abの値をとればBaの値をとる場合、宇宙的距離ほども離れたAの情報がBにも伝わる。

 このような現象を起こす量子は古典的粒子と異なり、同種粒子を区別できません。このため、これら量子は、区別可能な古典的粒子が従う古典統計とは異なる統計法則に従う、以下のような量子統計を持ちます。

1) フェルミ・ディラック統計
1つの状態には1個の粒子しか入れない」という「パウリの排他律」に従う統計。この統計に従う粒子をフェルミ粒子またはフェルミオンと呼ぶ。クォークや電子などの物質粒子はフェルミオンである。

2)ボース・アインシュタイン統計
1つの状態に何個でも入れる」ということに従う統計。この統計に従う粒子をボース粒子またはボソンと呼ぶ。光子などの力の媒介粒子はボソンである。

0 件のコメント:

コメントを投稿