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2020年1月21日火曜日

75. 反転の意味について

物体がボールのような球体だとすると、その球体の半径がどんどん小さくなって、ついには半径ゼロの点となり、その向こう側に突き抜けて、裏返って、今度は点から、どんどん半径を拡大して、また球体が大きくなっていくと考えます。このイメージは結構誰もが簡単にイメージできると思います。
このとき、球体の表面上を何か点状のものがぐるりと一回転すると考えれば、球体の半径がどんどん小さくなると、この点状のものが回転する半径も次第に小さくなります。このとき、回転する方向は、例えば、最初、時計回りだったとすると、球体の半径がどんどん小さくなって、球体が点となるまでは点状のものの回転は同じ時計回りですが、ついに球体が点となって裏返って、今度は半径が大きくなっていくときには、点状のものの回転は反時計回りになっています。つまり、球体の表面に位置する点状のものの回転の向きが反転するわけです。
75.1 球体の半径が小さくなって点となり、向こう側へ突き抜けた世界

ここでも、少し数式的な世界観で見ておきましょう。この点状のものが回転するところに平面を考え、その平面が複素数平面であるとすれば、この点状のものの運動全体は、


(75-1)

で表せます。

このとき、半径方向の縮小・拡大運動を対数で表し、さらに、その指数を虚数を用いで作為的に変形すれば、
(75-2)
と表せますから、結局、この点状のものの運動全体は、
(75-3)

で表し直せます。この式の後半部分はふつうの回転、つまり、角度が実数の回転を表しますが、前半部分は角度が純虚数の回転を表しているとも言えます。この角度が純虚数の回転は、円ではなく、直角双曲線を描く運動であり、「擬回転」とも「双曲的回転」とも呼ばれます。この擬回転は、2次元世界におけるローレンツ変換と同じカタチになるのです。

ちなみに、参考までに、複素数平面上の回転と実平面上の回転の対応に準じて、擬回転も対応づけておきます(複素数には分解型複素数が対応しますが、ここでは省略します)。

ここで、三角関数と双曲線関数の関係式は、以下の通りです。
実際に、2次元時空における擬回転とローレンツ変換を関係づけておきましょう。

ここで、
 (75-7) 

とおけば、


となりますから、左右どちらの等式からも、時間と空間に対するローレンツ変換の変換式
 (75-8)
が導き出せます。ローレンツ変換によって、時間と空間は独立に存在するものではなくなり、混ぜ合わされます。この変換式において、光速度cc→∞(無限大)と近づければ、vc0となり、分母も1に収束しますから、結局、
 (75-9)
というごくありふれた「ガリレイ変換」の変換式に近似することになります。ガリレイ変換においては、ガリレイ変換の前後で時間は変化せず、空間だけが変換の影響を受けます。

ここで、円と直角双曲線の数式上の類似的関係性を示しておきます。
                            図75.2 円と双曲線の類似的関係性
75.3 双対円錐の切断と楕円・双曲線(ウィキペディア「円錐曲線」より)
                          図75.4 ダンデリンの球と楕円・双曲線

75.5 視界と楕円・双曲線(長谷川浩司『線型代数』p.255より図1(イ)(ウ))

ボールのような球体の物体が、どんどん収縮し、光速に到達し点となった後、光速を超えて、逆に、拡大し始める仕組みは、私のイメージとしては、ミンコフスキー空間的光双対円錐の中を、球体が小さくなりながら双対円錐の中をくぐっていくイメージであり、それは知覚正面のもととなる複素数平面を、春巻きのように巻いた後でペシャンコにして知覚正面という平面とするときのプロセスで登場する、円錐状のカタチこそが、その光双対円錐そのものではないかと考えています。

75.6 写像の直観的イメージ(志賀浩二『複素数30講』p.128より図68

                                 図75.7 z-平面とw-平面の関係
75.8 自己回復のピストン運動
                        図75.9 回転と擬回転の位相の遷移のイメージ









74. 光速の壁と反転

さて、前置きはこれくらいにして、まずは、現代物理学の2本柱の一つの「相対論」とヌーソロジーの対応関係についてです。ヌーソロジーに登場する「相対論」的な概念と言えば、主に「特殊相対論」の方ですから、比較的イメージがしやすいと思います。

特殊相対論では、物体の運動する速度が光速に近づくほど、物体の大きさ、つまり、空間的な長さが収縮するという現象が起きると言います。もちろん、これは外部からこの物体の運動を見ている観測者に見える現象であって、本当に物体が縮んでいるわけではありません。この外部の観測者から見える、見かけの物体の大きさの収縮のことを、物理学では「ローレンツ収縮」と呼びます。ローレンツ収縮によれば、光速に近づくほど、物体の大きさが縮んでいき、ついに、光速になった瞬間、その大きさはゼロになる、つまり、点になると言います。

ヌーソロジーでは、なんとこの特殊相対論におけるローレンツ収縮を用いて、ついに光速に達して物体の大きさが点になった後、さらに光速を超えると、裏返って点の内部、つまり、物体の内部に入り、そのまま逆に物体の大きさが拡大していくと考えているようです。そのことを表していた図が、『2013:人類が神を見る日 アドバンスト・エディション』に掲載されていた以下の図です。
74.1 相互反転した世界
(半田広宣『2013:人類が神を見る日 アドバンスト・エディション』p.32より図1-3

つまり、物体はその運動の速度が光速を超えると、内側と外側が「反転」するという構図です。ヌーソロジーでは、これを人間の意識進化と関係づけています。意識進化などというと仰々しい物言いですが、要するに、人間が今まで住んでいた世界観が別の世界観へとシフトするという意味です。ヌーソロジーでは、この「世界観」というものを、観測者が対象を見る空間構造として捉えており、単に視覚だけによらず、人間の意識および精神全体との関係の中で捉えています。そして、その精神自体が、まさにこの宇宙そのものを構成する全体性として機能しているというわけです。
このヌーソロジーの考え方の最も端的な醍醐味が、この「反転」の思想です。短絡的な物言いをすれば、「物事は裏返って反転して先に進む」とか「物事は反転した裏側の構造を捉えてこそ全体性がわかって次の段階に行ける」とか、そういうことになります。これを安易に「意識進化」と呼んでしまうか否かは別にして、一つの物の見方としては、興味深いのではないでしょうか。
ヌーソロジーでは、この反転の意味を、より幾何学的な観点から捉えようとしています。私たち人間の意識がふつう住んでいる、つまり、位置付けられているのは、この時間と空間による宇宙、より正確には、1次元の時間と3次元の空間から成り立つ4次元時空です。それは光速以下の世界です。物理学の特殊相対論に基づけば、どんな物体の運動の速度も光速を超えることはなく、しかも、その光速はすべての観測者から一定であるという、光速度限界の原理および光速度一定の原理が成り立つとされています。つまり、物体の運動ということに関して言えば、光速の壁があるというわけです。光速は宇宙のどの方向に向けても一定ですから、物体が運動している世界において、光速と等しい世界、つまり、光の世界というのは、まるで球面のようなイメージで捉えることができます。
ヌーソロジーは、この光速の壁こそ、人間の意識の最初の壁であり、今はその壁の内側に閉じ込められている状態なのだと言います。つまり、人間の意識は、まさしくボールのような球体状のものの内部として捉えることができるというわけです。もっと端的に言ってしまえば、光速とはモノの表面であり、人間の意識はモノの内部に閉じ込められているというわけです。ヌーソロジーでは、人間が物事のカタチをイメージするとき、そのカタチは球体のイメージが基本となっていて、その球体のイメージこそがモノを形作っている概念そのものとも対応していると考えます。そして、その球体の表面こそ、光速限界という壁だと考えるのです。

ここで、少しだけ数式的な世界観に触れてみましょう。物理学では、物体の運動を表す物理量として、「運動量」というものを扱いますが、物理学で扱う物理量には、短絡的に言えば、大きさだけによるスカラーと、大きさと方向を持ったベクトルというものがあり、この運動量はベクトルの方です。この運動量は、物体の質量というスカラーmに、3次元の速度ベクトルvを掛け合わせたベクトルpとして表現されます。この速度ベクトルは、3次元空間における位置ベクトル
 ……(74-1)
に対する時間変化、つまり、時間微分として、
 …… (74-2)
と書けます。したがって、光速度限界を持つ私たちの世界において、
  …… (74-3)
と書けます。

ところで、3次元空間における球体の内部というのは、
  …… (74-4)
と表わせますから、ここで、
  …… (74-5)
と置き換えれば、
 …… (74-6)
すなわち、 

 …… (74-7)
と表わせます。つまり、光速を表面に持つ球体の内部が私たちの世界ということになるわけです。

後の説明のために、この数式をさらに変形しておきますと、
この両辺に
を掛ければ、

 …… (74-8)
となり、空間項を移項すれば、
 …… (74-9)
となりますここで、4次元の時空距離を
…… (74-10)
と定義すれば、
 …… (74-11)
となります。この時空距離は、ふつうの距離、例えば、4次元空間の距離とは異なります。
 …… (74-12)
の形がふつうの距離であり、4次元時空における時空距離(ローレンツ距離)は、
…… (74-13)
です。これは、後で述べる4次元空間と4次元時空の差異になってきますので、少し記憶にとどめておいて下さい。












73. ローレンツ変換の導出

改めて、ガリレイ変換とその逆変換を、行列を用いて表せば、
となります。つまり、ガリレイ変換の変換行列は、
 …… (73-3)
です。

ここで、古典力学の波動方程式が成り立つように、変換行列
 …… (73-4)
を考えれば、
 …… (73-5)
となり、逆変換の行列
 …… (73-6)
より、
となりますから、ここで、偏微分を調べておくと、
となります。
よって、
ですから、
 …… (73-14)
となります。これを満たす係数A, B, C, Dを求めれば、変換行列は、
 …… (73-15)
と書けます。

マクスウェル理論における電磁波の波動方程式を不変にする変換とは、x軸とict軸によって張られた空間で虚数角(角度が虚数)iζの回転であり、不変量はノルム(原点からの距離の2乗)です。この変換ではニュートン方程式は不変となりませんが、光速度よりはるかに遅い速度の下ではガリレイ変換と近似します。









72. ガリレイの相対性原理とマクスウェル方程式

さて、このように点の運動と、座標系の運動、より正確には座標変換は、運動の向きが逆になるだけで、観測者にとっては相対的に同じものであることがわかりました。

では、その相対性原理について、具体的に見ていきましょう。まずは、ガリレイの相対性原理です。ある座標変換に対する相対性原理が成り立つというのは、その座標変換の下で運動方程式の形が不変であるということを意味します。

例えば、2次元時空(1次元時間+1次元空間)におけるガリレイの相対性原理の場合、相対速度Vで近づく2つの座標系同士なら、
 …… (72-1)
というガリレイ変換で移り合います。
 
 すると、一方の座標系で、運動方程式であるニュートン方程式
 …… (72-2)
が成り立つ場合、他方の座標系では、
 …… (72-3)
が成り立つはずですが、式(72-1)より、

 …… (72-4)
さらに、 
 …… (72-5)
となりますから、式(72-2)が成り立つとき、式(72-3)も成り立ちます。逆変換も同様です。したがって、ガリレイ変換の下でニュートン方程式は不変です。

ちなみに、ガリレイ変換の逆変換は、
 …… (72-6)
となります。

ここで、偏微分を調べておくと、

となります。このとき、古典力学における古典力学における波動方程式


  …… (72-9)
を調べてみると、

ですから、
(72-11)
となって、一般に、のとき、古典力学における波動方程式は成り立ちません
(ただし、のとき、ガリレイ変換後の波動方程式は、元の波動方程式に近似します)。

したがって、マクスウェル方程式から導かれる電場や磁場の波動方程式も、ガリレイ変換で不変とはなりません。そして、もっとダイレクトに、マクスウェル方程式自身に、上記のようなガリレイ変換を施しても、マクスウェル方程式は不変とはなりません。