さて、いきなり「波動関数」という言葉を多用してしまいましたが、この波動関数の「波動」とは何でしょうか。元々、この「波動」とは読んで字のごとく、「波が動くさま」のことですが、「波」と聞いてみなさんはどのようなものを思い浮かべるでしょうか。
単純な波の形としては、「正弦波」が基本的な形です。いわゆる「正弦関数」のグラフの形であるが、位相を90度ずらせば「余弦関数」のグラフになります。
図57_1 正弦関数と余弦関数(佐藤文隆・松下泰雄『波のしくみ』より)
ここに登場する波動関数ψ(r, t)は、4次元時空(=3次元空間+1次元時間)の関数ですが、これではイメージがつかみにくいと思いますので、まずは次元を落として、もう少しわかりやすい2次元時空(=1次元空間+1次元時間)の関数ψ(x,t) として改めて眺めてみましょう。
一般に、現代物理学において、観測対象となる物理量は、一般に波動関数の形をとります。例えば、最も基本的な波である自由な平面波は、2次元時空においては、
と書けます。ここで、この指数関数における底の肩に乗っている指数θは、
と書けて、波動関数の「位相」と呼ばれます。改めて「位相」とは何かと言われれば、動いていく波の位置の相だと言ってもいいでしょう。まさしく円周上の点の位置を示す角度のことだと言えます。なお、平面波とは、位相が一定となる面(等位相面)が平面となる波のことです。ここでは、空間を伝わる波で波面が平面であるもののうち、ふつう進行波を指します。
図57_2 波の性質(志村史夫『BLUEBACKS いやでも物理が面白くなる』p.27より図1-14)
ここで、波には波を特徴づけるいくつかの物理量があるので、まとめて紹介しておきましょう。
初期位相:δ … 原点からのずれ
振幅 :A … 波が1回上下する幅の半分
周期 :T … 波が1回上下する時間
波長 :λ … 波が1回上下する長さ
振動数 :ν=1/T … 単位時間(秒)に波が1回上下する回数
波数 :κ=1/λ … 単位長さ(m)に波が1回上下する回数
となりますが、波が1回上下動することを波1個と呼ぶことにすれば、
振幅 :A … 波1個の揺れ幅の半分
周期 :T … 波1個の時間
波長 :λ … 波1個の長さ
振動数 :ν=1/T … 単位時間当たりの波の個数
波数 :κ=1/λ … 単位長さ当たりの波の個数
と書き換えられます。最後の振動数と波数については、さらに、
角振動数:ω=2πν … 位相1ラジアン単位の振動数
角波数 :k =2πκ … 位相1ラジアン単位の波数
が定義されます。
さて、量子論の作用単位とも言える「プランク定数」
から、位相1ラジアン単位で換算した物理量である「換算プランク定数」(ディラック定数)を定義すれば、

となります。ここで、光子(photon)のエネルギーと運動量に関して
という関係があります。すると、前述の位相は、
と変形できます。したがって、前述の2次元時空における波動関数は、初期位相δをゼロとすれば、
と書き直せます。
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