ページビューの合計

2019年10月23日水曜日

43. 世界観の変遷とヌーソロジー (2)

これを踏まえて、私は、以下のように、ヌーソロジーと言語の対応についての仮説を立てました。

(1)ψ 7~ψ 8:詩的言語
…原始土地機械、コード化、生産の生産と関係する
…第一次産業(特に農耕革命と農業)と関係
…プレ近代(プレモダン)と関係(哲学的には実存主義まで)
(数学との対応は、古典ギリシア数学のψ7:幾何学、ψ8:数論)
(2)ψ 9~ψ10:宗教言語
…専制君主機械、超コード化、登録の生産と関係する
…第ニ次産業(特に産業革命と工業)と関係
…近代(モダン)と関係(哲学的には構造主義)
(数学との対応は、近代に台頭してきたψ9:解析学、ψ10:代数学)
(3)ψ11~ψ12:科学言語
…資本主義機械、脱コード化と関係する
…第三次産業(特にIT革命と流通業)と関係
…ポスト近代(ポストモダン)(哲学的にはポスト構造主義)
(数学との対応は、20世紀以降のψ11:数学基礎論および数学の各分野の混ぜ合わせ、ψ12:統計学、応用数学、数理~学)

これらに対して、半田広宣氏は、

人間の歴史空間はΩ7Ω8に対するΩ9Ω10の交差により生成してくるものである。Ω9Ω8に対する交差が「人間の意識の内面性(人間の性質の流れ)」を生み出し、一方、Ω10Ω7に対する交差が「人間の意識の外面性(人間の定質の流れ)」を生み出してくる。。Ω8の内部構成は[Ω2=ψ8Ω4=ψ10Ω6=ψ12Ω8=ψ14]となっており、同様にΩ7の内部構成は[Ω1=ψ7Ω3=ψ9Ω5=ψ11Ω7=ψ13]となっている。このことから、人間の次元は人間の意識の内面側が先手を持って作用していくことになる。
と前置きした上で、以下の通り、補足・訂正しています。
図1 ヒトの思形と感性

■[ψ8]〜ψ7 : 詩的言語
……原始土地機械、コード化、生産の生産
……原始部族における原始共産的体制。主に狩猟や遊牧と関係する
……四大文明以前の超古代と関連。呪術的。文字の不在。

ψ8――転換作用のため意識は存在しない。
ψ7——宇宙的原母の内部空間。

■ψ10ψ9 : 宗教言語
……専制君主機械、超コード化、登録の生産。
……国家との登場。「書かれたもの(エクリチュール)」の絶対性。農耕社会、定住性の成立。

ψ10…多神教的言語(古代エジプト・バビロニア等の古代国家)
    想像界的信仰。母権的、女性的、魔術的、偶像崇拝。
ψ9…一神教的言語(ユダヤ・キリスト教)
     象徴界的信仰。父権的、男性的、律法的、偶像崇拝を認めない。

ψ9ψ10領域においては物と言語は対等。言語は世界の鏡であり、物と言葉は「類似」の関係を持って結ばれており、同等のレベルでの実在とされる。この領域においては、神話や聖書に見られるように、象徴=実在、英雄譚=歴史であり、物語=現実世界が成り立つ。

■ψ10ψ9からψ12ψ11への移行期
ルネサンス期………言葉と物とが持つ類似性の崩壊。物語世界と現実世界の乖離が決定的となる(ドン・キ・ホーテ)。固有名が力を持ってくることによって、個の意識の萌芽が始まる。

■ψ12ψ11前半 : 通常言語の記号化〜科学的言語の登場
………資本主義機械前期。脱コード化。消費の生産と関係する。神経症的。
………言葉と物のシニフィアンとシニフェという二元関係への変動。
………言葉は言葉、物は物として別個の世界の中で秩序を持つようになる。
………表象としての思考空間の誕生、およびその超越的主体性としてのコギト(近代的自我)の登場。

ψ12前半15世紀〜17世紀(大航海時代〜古典主義時代〜バロック時代)
 唯名論によって信仰と認識の問題は分離され超越的なものの縛りから解放されてくる(中世スコラ哲学の終焉)。地動説等による影響で俯瞰的視線を各個体が内部に同一化させ近代自我が確立されてくる(デカルト)。モノの言語の分離が光と影のコントラストを強くし、二元論的思考が台頭してくる(バロック)。
ψ11前半17世紀〜19世紀(科学主義の台頭〜唯物論登場当たりまで)
     ガリレオ、ケプラー、ニュートン等、科学の教父たちの登場。ラプラスに代表される科学による決定論的世界観の確立。フォイエルバッハ-マルクスーレーニンの系譜による唯物史観の確立。古典物理学の完成。科学的言語の確立はこの時期に達成されたと見ることができる。

■ψ12ψ11後半 : 通常言語の瓦解〜科学的言語の高度の抽象化
………資本主義機械後期。脱コード化の超コード化。欲望の生産と関係する。分裂症的。
………言葉は言葉、モノはモノとしての独自の生殖回路を開くことによる、差異の生産の爆発的増大。
………象徴界の力が衰退し想像界が勢力を増してくることによって、コギトの自明性の揺らぎが始まる。

 ・ψ12後半…19世紀~20世紀 帝国主義国家の闘争
第一次世界大戦、第二次世界大戦後の国連設置のようにワンワールド体制への欲動が動き始める。あらゆるイズムは貨幣一元主義によって解体または 統合されていき、経済体制が政治体制を凌駕するようになる。
 ・ψ11後半——19世紀〜20世紀後半
       印象派からシュールレアリスム、ダダ、抽象というように人間の外面側での意識表象へと表現スタイルが移行してくる。フッサール、フロイト、ソシュール等の登場により、意識に構造を見ようとする思想が生まれてくる(構造主義への発展)。

■ψ14 : 精神構造の負への反転(デジタル空間)
19892012年。顕在化の反映としてのデジタル空間への侵入が始まる。言葉は画像記号や音声記号として処理され、意味性を剥奪されすべてが情報という名でデータベース化されていく。同時に、言語から物質性(紙、肉声)が剥奪させられ、データベース上の磁気信号に変換される。

■ψ13 : 精神構造の正の反転(ヌーソロジー空間/ポストデジタル空間)
20132037年。定質(意識構造を形作っていた力)が形質(幾何学)に変換されることにより、群、トポロジー等の抽象数学が知覚的対応物を持つようになる。人間の意識構造が知覚化されてくることによって、歴史認識は激変を被り、永遠回帰的世界観が再興する。

したがって、ヌーソロジーにおいて、人類史における、先人達が繰り広げた物理学の変遷というものを考えるときも、こうした歴史空間のケイブ(洞窟)の中で捉えるべきだということです。
そうは言っても、いきなりこうした大掛かりな精神構造の下で話してもヌーソロジーの思考に慣れていない方々はなかなかピンと来にくいと思われるので、もう少し取っ付きやすいところ――次元観察子付近――から見てみましょう。
まず、ヌーソロジーの次元観察子の説明として、前半のψ1~ψ8は「自然科学」特に「量子力学」や「素粒子物理学」を用いた説明が多く、後半のψ7~ψ14は「人文科学」特にドゥルーズ=ガタリの哲学を用いた説明が多いようです。大雑把には以下の通りです。


人文科学(特に、哲学)         自然科学(特に、物理学) 
      ドゥルーズ=ガタリの哲学対応    現代素粒子物理学対応 

ψ13ψ14 他者の原始土地機械・         
専制君主機械・資本主義機械   
ψ11ψ12 資本主義機械(脱コード化)    
ψ 9ψ10 専制君主機械(超コード化)   
ψ 7ψ 8 原始土地機械(コード化)   強い力(クォークとグルーオン)
ψ 5ψ 6                弱い力(レプトンとウィークボゾン)  
ψ 3ψ 4                電磁気力(荷電粒子と光子)     
ψ 1ψ 2                 時空                    




ここで、ヌーソロジーの観察子の仕組みとして、「凝縮化」というものがある。この仕組みを正確に説明するのは容易でないのだが、大雑把には、以下のような感じで全体の機能が圧縮されるような感じでシフトする程度に捉えておくのが妥当ではないでしょうか。

ψ* 7ψ* 8 ⇒ ψ 1ψ 2 古典的(クラシック)世界観の生成
ψ* 9ψ*10 ⇒ ψ 3ψ 4 現代的(モダン)世界観の生成
ψ*11ψ*12 ⇒ ψ 5ψ 6 ポスト現代的(ポストモダン)世界観の生成
ψ*13ψ*14 ⇒ ψ 7ψ 8 古典的(クラシック)世界観の更新


果たして、これらは物理学、特にその王道とも言える力学における、世界観の変遷にもうまく対応するでしょうか。これからその辺りを見ていくことにしましょう。


2 力学の変遷

0 件のコメント:

コメントを投稿