素粒子は。以下のように、スピンの種類によってそれぞれ運動方程式が異なります。
・スピン0の粒子 (スカラー粒子)……クライン=ゴルドン方程式
・スピン1/2の粒子(スピノル粒子)……ディラック方程式
・スピン1の粒子 (ベクトル粒子)……質量がある場合、プロカ方程式
質量がない場合、マクスウェル方程式
・スピン3/2の粒子(ベクトル・スピノル粒子)……ラリタ=シュウィンガー方程式
・スピン2の粒子 (重力子) ……アインシュタイン方程式
なお、素粒子物理学においては、相対論的力学を考慮するため、スピン1/2の粒子も、私たちにはお馴染みの非相対論的な波動方程式である「シュレーディンガー方程式」を用いずに、相対論的な波動方程式である「ディラック方程式」の方を用います。
さて、ここで、よく用いる共通の記号の意味を定義し、まとめておきます。まず、角振動数と角波数の演算子、および、エネルギーと運動量の演算子は、それぞれ、
とします。また、反変ベクトル側の微分演算子を、
共変ベクトル側の微分演算子を
とします。なお、
のような式は、「アインシュタインの縮約」と呼ばれる、同じ形の記号の和をまとめる表記法を用いて、
のように、シグマ記号を省略して記述します。
(1) スピン0の粒子(スカラー粒子)の運動方程式(クライン=ゴルドン方程式)
古典力学における相対論的関係:
を量子化すれば、エネルギーや運動量を演算子に置き換えて、
となります。ここで、エネルギー演算子と運動量演算子の定義式を代入して整理すれば、
となります。これを「クライン=ゴルドン方程式」と呼びます。ここで、アインシュタインの縮約を用いれば、
とまとめられますので、結局、クライン=ゴルドン方程式は、
と簡潔に表記されます。また、元の式
より、直接
と書いても同じ意味です。
(2) スピン1/2の粒子(スピノル粒子)の運動方程式(ディラック方程式)
クライン・ゴルドン方程式の左辺を、ディラックのγ行列を用いて因数分解すれば、
となりますから、これより、
となります。ここで、代表的な方を採用すれば、
となります。ここで、エネルギー演算子と運動量演算子の定義式を代入して整理すれば、
が得られます。これを「ディラック方程式」と呼びます。ここで、「アインシュタインの縮約」を用いれば、
と書けますから、これは簡潔に
あるいは、
より、直接
と表記できます。なお、ψは「ディラック・スピノル」と呼ばれる4成分スピノルです。
この方程式に登場する4×4行列のディラックのγ行列(共変形式)については、異なる添数同士が以下のような反交換関係式を持ちます。
…… (76-25)
反交換子:
を定義し、これを用いてまとめれば、簡潔に、
と書けます。ただし、ηはミンコフスキー空間の計量行列です。ディラックのγ行列は、この関係式を満たす4×4行列であれば、何でも構いません。
そのうち、よく用いられるものとしては、「ディラック表示」(または、「ディラック=パウリ表示」)と呼ばれるものと、「ワイル表示」と呼ばれるものがあります。
まず、「ディラック表示」と呼ばれるものは、以下の形式で、主として「粒子が光速よりはるかに低速の場合」に用いられます。
なお、まとめて、
と表記できます。さらに、直積表現で書けば、
と書けます。
一方、「ワイル表示」(または「カイラル表示」)と呼ばれるものは以下の形式で、主として、粒子が「光速に近いほど高速の場合」に用いられます。
直積表現で書けば、
と書けます。
ここで、σ1,σ2,σ3は「パウリ行列」と呼ばれる2×2行列で、
です。なお、パウリ行列同士の関係として、
が成り立ちます。
ここで、ψの共役として、
を定義し、
の両辺の共役をとれば、「共役ディラック方程式」は、
となります。「アインシュタインの縮約」を用いれば、
と書けますから、これは簡潔に
と表記できます。
(3) スピン1の粒子(ベクトル粒子)の運動方程式(プロカ方程式)
と書けて、マクスウェル方程式(ⅰ) (ⅱ)は、
と表わすことができました。これは、「アインシュタインの縮約」を用いれば、
と簡潔に書けます。
このマクスウェル方程式をベースにして、質量項を加えたものを作れば、
となります。これを「プロカ方程式」と呼びます。これも、「アインシュタインの縮約」を用いれば、
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