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2020年4月28日火曜日

76. 素粒子の運動方程式

素粒子は。以下のように、スピンの種類によってそれぞれ運動方程式が異なります。

スピン0の粒子  (スカラー粒子)……クライン=ゴルドン方程式
スピン1/2の粒子(スピノル粒子)……ディラック方程式
スピン1の粒子  ベクトル粒子)……質量がある場合、プロカ方程式
                          質量がない場合、マクスウェル方程式
スピン3/2の粒子(ベクトル・スピノル粒子……ラリタ=シュウィンガー方程式
スピン2の粒子  重力子    ……アインシュタイン方程式
 
なお、素粒子物理学においては、相対論的力学考慮するため、スピン1/2の粒子も、私たちにはお馴染みの非相対論的な波動方程式である「シュレーディンガー方程式を用いずに、相対論的な波動方程式である「ディラック方程式」の方を用います。

さて、ここで、よく用いる共通の記号の意味を定義し、まとめておきます。まず、角振動数と角波数の演算子、および、エネルギーと運動量の演算子は、それぞれ、

とします。また、反変ベクトル側の微分演算子を、
   ……(76-5)
共変ベクトル側の微分演算子を
……(76-6)
とします。なお、
(76-7)
のような式は、「アインシュタインの縮約」と呼ばれる同じ形の記号の和をまとめる表記法を用いて、
… (76-8)
のように、シグマ記号を省略して記述します。


(1) スピン0の粒子(スカラー粒子)の運動方程式(クライン=ゴルドン方程式)

古典力学における相対論的関係:
    …… (76-9)
を量子化すれば、エネルギーや運動量を演算子に置き換えて、
 …… (76-10)

となります。ここで、エネルギー演算子と運動量演算子の定義式を代入して整理すれば、

  …… (76-11)
となります。これを「クライン=ゴルドン方程式」と呼びます。ここで、アインシュタインの縮約を用いれば、

 …… (76-12)
とまとめられますので、結局、クライン=ゴルドン方程式は、

 …… (76-13)
と簡潔に表記されます。また、元の式
 …… (76-14)
より、直接
 …… (76-15)
と書いても同じ意味です。


(2) スピン1/2の粒子(スピノル粒子)の運動方程式(ディラック方程式)

クライン・ゴルドン方程式の左辺を、ディラックのγ行列を用いて因数分解すれば、
となりますから、これより、
…… (76-17)
となります。ここで、代表的な方を採用すれば、
 …… (76-18)

となります。ここで、エネルギー演算子と運動量演算子の定義式を代入して整理すれば、
 …… (76-19)

が得られます。これを「ディラック方程式」と呼びます。ここで、「アインシュタインの縮約」を用いれば、

…… (76-20)
と書けますから、これは簡潔に
 …… (76-21)
あるいは、 
 …… (76-22)
より、直接
 …… (76-23)
と表記できます。なお、ψは「ディラック・スピノル」と呼ばれる4成分スピノルです。
 …… (76-24)
この方程式に登場する4×4行列のディラックのγ行列(共変形式)については、異なる添数同士が以下のような反交換関係式を持ちます。

…… (76-25)
反交換子:
…… (76-26)
を定義し、これを用いてまとめれば、簡潔に
 …… (76-27)
と書けます。ただし、ηはミンコフスキー空間の計量行列です。ディラックのγ行列は、この関係式を満たす4×4行列であれば、何でも構いません。
そのうち、よく用いられるものとしては、「ディラック表示」(または、「ディラック=パウリ表示」)と呼ばれるものと、「ワイル表示」と呼ばれるものがあります。
まず、「ディラック表示」と呼ばれるものは以下の形式で、主として粒子が光速よりはるかに低速の場合に用いられます。
…… (76-28)
なお、まとめて、 
 …… (76-29)

と表記できます。さらに、直積表現で書けば、
 …… (76-30)

と書けます。

一方、「ワイル表示」(または「カイラル表示」)と呼ばれるものは以下の形式で、主として、粒子が光速に近いほど高速の場合に用いられます。
 …… (76-31)
直積表現で書けば、
 …… (76-32)
と書けます。
ここで、σ1,σ2,σ3は「パウリ行列」と呼ばれる2×2行列で、
 …… (76-33)
です。なお、パウリ行列同士の関係として、
が成り立ちます。
ここで、ψの共役として、
…… (76-36)
を定義し、
 …… (76-37)
の両辺の共役をとれば、「共役ディラック方程式」は、
 …… (76-38)
となります。「アインシュタインの縮約」を用いれば、
 …… (76-39)
と書けますから、これは簡潔に
 …… (76-40)
と表記できます。


(3) スピン1の粒子(ベクトル粒子)の運動方程式(プロカ方程式)

4元電磁ポテンシャルを
とすれば、電磁場テンソルは
 …… (76-41)
と書けて、マクスウェル方程式() ()は、
 …… (76-42)

と表わすことができました。これは、「アインシュタインの縮約」を用いれば、
 …… (76-43)
と簡潔に書けます。

このマクスウェル方程式をベースにして、質量項を加えたものを作れば、
 …… (76-44)

となります。これを「プロカ方程式」と呼びます。これも、「アインシュタインの縮約」を用いれば、
 …… (76-45)
と簡潔に書けます。

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