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2019年12月31日火曜日

48. 古典力学的世界観の完成 (1)

さて、物理学的な意味での「場」というものが意識されるようになったのは、18世紀以降であるように思います。実際、18世紀は、「力学的な原理」も生まれ、数学、力学ともに、「組織」化の道を歩み始めていたと言われます。
初期のニュートン力学は「質点の力学」でしたが、この頃には、剛体・流体を始めとする連続体の力学も発展しました。そうした中で登場してきたのが「エネルギー」の概念と「最小作用の原理」(ハミルトンの原理)でした。これらは、後に「場」という概念が構築される上で、非常に重要な役割を果たすことになります。

1 最小作用の原理(仲滋文『新版シュレーディンガー方程式』より)

最小作用の原理」は、簡単に言えば、

「物体は運動するときにかかる労力が最小となる経路を選ぶ」

という原理です。この「運動するときにかかる労力」を「作用」と呼びます。実際には必ずしも作用が最小というわけではなく、作用の変分がゼロ、つまり、作用が極大・極小・鞍点のいずれかという停留値となるため、「停留作用の原理」と呼ぶべきだという人もいます。前述の「ニュートン方程式」もこの最小作用の原理から自然に導かれます。
作用:
   (48-1)

は、一般化座標(位置)と一般化速度および時間の関数ですが、一般化座標(位置)の関数の形によって変化する汎関数です。ここで、被積分関数は「ラグランジアン」(ラグランジュ関数)と呼ばれます。「ラグランジアン」とは、簡単に言ってしまえば、物体の「運動エネルギー」から「位置エネルギー」(ポテンシャルエネルギー)を引いた差のことです。
 
 最小作用の原理は、一般座標(位置)の始点と終点を固定にした上で、途中の経路を変化させたときに、作用を最小にするが古典力学により許される一般座標(位置)であることが要請されます。すなわち、経路qとわずかに異なる経路q+δqの差から、δq1次近似として作用の差

   …(48-2)

を考えると、始点と終点が固定ですから第1項がゼロとなり、一般座標(位置)が作用を最小にすることから

    …(48-3)
となって、

  (48-4)

という「ラグランジュの運動方程式」が導かれます。
 
 一般化座標(位置)の時間微分は一般化速度になりますが、ラグランジアンを速度で偏微分したものが「一般化運動量」に対応し、ラグランジアンを座標(位置)で偏微分したものが「一般化力」に対応します。


 初めてのうちは、何だか、直観的にわかりやすい「ニュートンの運動方程式」がずいぶん仰々しい形になった印象を受けますが、実際に「ラグランジアン」をもとに、この式で計算してみると、「ニュートンの運動方程式」が出て来ますから、元々同じものであったことがよくわかります。

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