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2013年7月5日金曜日

13. 観察子の背景にある世界観

それでは、ヌーソロジーにおいて「観察子」と呼ばれるものとは何でしょうか。『2013:シリウス革命』(1999)にこんな記述があります。

「普通、僕らは宇宙や意識が物質から発生しているものと考えているが、彼らの考え方は、それらをすべて空間の構造に由来するものとして考えている。ファイルの中でオコツトが「意識とはカタチの反響です」と言ってるのも、彼らのそういった世界観からくるものだ。そのため、彼らにとって、意識構造と空間構造という概念は全く同じ意味合いを持っている。事実、オコツトはタカヒマラのことを意識の次元階層とも呼んだし、空間が持つ次元の階層性という言い方もした。そして、そもそも「次元」という概念自体が、純粋幾何学的なものであり、本来、幾何学というのは、意識が生起するための空間構造として成立しているというのだ。つまり、彼らシリウスの知性にとって、意識とはある一つの巨大な幾何学構造体なのである。そして、彼らは、この構造体を組み立てている空間的部材に対して、「観察子」という概念を用いているのである。
 「観察子」という言葉はちょっと、とっつきにくいかもしれないが、次のように考えると理解しやすいだろう。
 僕ら人間の世界では、宇宙の構造を解明するために「粒子」という概念を用いている。粒子とは、宇宙が物質でできているという考え方にもとづいて作り出された概念であり、実際、物理学や化学といった学問では、物質を分子や原子、そして素粒子に分解し、宇宙で起こる様々な現象の本質について探っている。これらとは対照的に、オコツトたちは、宇宙とは空間、つまり、さきほどの言い方を用いれば、意識で作られていると考えている。そして、その意識の仕組みを分析するために使用されているのが、この観察子という概念だと考えてほしい。そして、物質粒子に、原子や分子といった種類があるように、観察子にも、空間観察子や次元観察子や大系観察子などといった分類を設けているわけだ。」(『2013:シリウス革命』p.107~p.108)

要するに、この「意識構造と空間構造を同じものとして見る」という考え方を用いて、ヌーソロジーは物質と意識の統一を目論んでいるわけです。そして、こんなことが書かれています。

「前頁の脚注欄にある図を見てほしい。この三角形は、シリウスの宇宙観にとって、意識と物質がどのような仕組みによって構造化されているかを最も単純化して表したものだ。この三つの球体はそれぞれ、物質、意識、イデアを表している。イデアとは平たくいうと、数や幾何学が支配する完全な思考世界のようなものだと思ってもらえばいい。
 図にある通り、オコツトたちにとっては、まず、物質世界は意識世界の一部になっており、次に意識世界は、イデアの世界の一部に含まれたものとなっている。そして、面白いことに、最も上次元であるはずのイデア世界が、今度は、元の物質の世界にそのまま組み込まれているような構造になっているわけだ。
 この三位一体(トリニティ)の関係は、僕らが物質と呼んでいるハードなリアリティが、実は、観念によって生み出されたイデアの影のようなものでしかないということを物語っている。オコツトによれば、これら、物質、意識、イデアという三者は、タカヒマラにおいては全く対等な存在であり、それぞれが相互に補完し合って成立させられているというのだ。この図では、かのプラトンが主張したほどイデア世界の絶対性は強調されてはいないが、いずれにしろ、シリウスの宇宙観が、物質世界をイデアの写し絵だと見る古代の伝統的な宇宙観にきわめて似ていることは確かなようだ。」(『2013:シリウス革命』p.110)

ちなみに、この前頁の脚注欄にあるイデアと意識と物質という3つの球体を頂点とする三角形の図を見て、すぐに、次の「ペンローズ三角形」およびそれを駆使したペンローズの3つの世界の関係の図を思い浮かべた人は、かなりの情報通かもしれません。

3つの世界と言えば、よく精神と物質という2つの世界の間に生命を置いたりします。カール・ポパーは、精神的世界と物質的世界に文化的世界を加えています。これに対して、数学者ペンローズは、複数の著書の中で、精神的世界(Mental World)と物質的世界(Physical World)にプラトン的世界(Platonic World)を加えて、しかも、それを、まるで、ジャンケンのグー・チョキ・パーの三つ巴関係にも似た、捩れを持った三角形である「ペンローズ三角形」の3つの頂点として描いています。ペンローズにとって、このプラトン的世界とは、数学的な世界のことのようです。

では、ヌーソロジーのイデアと意識と物質が、そのままペンローズのプラトン的世界と精神的世界と物質的世界に綺麗に対応するかと言えば、似ているとはいえ微妙で、そもそもヌーソロジーでは「精神」という言葉自体を、「対化を等化する力そのもの」として、私たちが通常「精神」と呼ぶものよりも、広範囲というか、むしろ幾何学的なものとして捉えており、意識とは上位の精神構造によってもたらされるある種の反映物と言った方がよさそうです。

さて、イデアと意識と物質は、『2013:シリウス革命』の時点では、それぞれ綺麗に、イデアが「大系観察子」Ω、意識が「次元観察子」ψ、物質が「空間観察子」αというように、観察子の種類の違いとなって対応していました。今は、まるでこの「ペンローズ三角形」を眺める視点を加えて「ペンローズ四面体」とでも拡張するかのごとく、「脈性観察子」Φが追加されています。

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